AIやコンピュータービジョンを駆使したバーチャル試着のZeekitを買収のウォルマートより四半期配当54.45ドルを獲得
小売大手のWalmart(ウォルマート)は米国時間5月13日、消費者がオンラインで買い物するときにバーチャルで試着できるようにするテルアビブ拠点のスタートアップZeekit(ジーキット)を買収すると発表した。
Zeekitは買い物客の体の寸法、好みのフィット感、サイズ、そしてアイテムの素材すら考慮するシミュレーションで、そのアイテムを着用したときに買い物客がどのように見えるのかを示すのに、リアルタイムの画像処理、コンピュータービジョン、深層学習、AIテクノロジーを活用している。
買収取引の条件は明らかにされなかった。PitchBookのデータによると、Zeekitは資本外で2400万ドル(約26億3000万円)を調達しているが、それは正確ではないことをTechCrunchは確認した。同社は2016年にシリーズAで900万ドル(約9億8000万円)を調達し、2014年からの累計調達額は1600万ドル(約17億5000万円)だ。
Zeekitは今回の買収の前に、Walmart、Macy’s、Asos、Tommy Hilfiger、Adidasなどさまざまな小売業者やブランドと協業してきた。ショーで扱われたアイテムを女性が購入するのをサポートするためにファッションウィーク中にRebecca Minkoffに協力したこともある。
ZeekitはCEOのYael Vizel(ヤエル・ヴィツェル)氏、R&D担当副社長のNir Appleboim(ニル・アップルボイム)氏、CTOのAlon Kristal(アロン・クリスタル)氏が2013年に創業した。テクノロジーを使ってオンラインで買い物する人が自分が着たときの外観を見ることができれば、フィットしない、似合わないという理由での返品率を下げることができる、との考えが出発点だ。
Free People、Champion、Levi Strauss、ELOQUII Elements、Free Assembly、Scoop、Sofia Jeans by Sofia Vergaraなどのブランド、加えてTime and Tru、Terra & Sky、Wonder Nation、Georgeといったプライベートレーベルブランドのアイテムをバーチャル試着するのに顧客はZeekitのテクノロジーを使うことができるようになるとWalmartはいう。
ZeekitのテクノロジーがWalmart.comに備わると、顧客はアイテムを試着した自分をバーチャルで確認できるようにするために、自分自身が映った画像をアップロードしたり、あるいは自分と身長、体型、肌の色が同じモデルを選ぶことができる。目的は、実在の店舗での試着と似ている体験をオンラインショッピングで提供することだ。
買い物客は、ソーシャルの要素をオンラインショッピングに加えるインテグレーションにより、セカンドオピニオンを求めてバーチャル試着した自分の外観を友達とシェアすることもできる。
バーチャル試着に加えて、Zeekitのテクノロジーは今後、ワードローブ内のアイテムの組み合わせを試すことができるバーチャルクローゼットを含む他のファッション体験構築にも使える、とWalmartは話す。
買収が完了すれば、Zeekitの3人の共同創業者たちはWalmartに加わる。
「リアルタイム画像テクノロジー、コンピュータービジョン、人工知能をファッションの世界にもたらすという点でチームの専門性に自信を持っています。我々はファッションの第1目的地になるという今後も継続する取り組みにおいて、顧客のためにイノベートするさらに多くの方法を模索します」とWalmart米国でアパレルとプライベートブランドを担当するEVPのDenise Incandela(デニーズ・インカンデラ)氏は声明文で述べた。
Walmartはここ数年、アパレルにかなり投資しており、 Bonobos、ModCloth、Eloquiiといったオンラインブランドを買収し、NikeのようなブランドのショップをWalmart. comで提供しようと試みたりしている。こうした取り組みのすべてが報われたわけではない。たとえばWalmartは買収からわずか数年でModClothを売却した。ModClothの顧客がWalmartに所有されることに難色を示し、また赤字が続いたためだ。直近では、Walmartは多数の中古アイテムをウェブサイトに表示するためにオンライン委託ショップThredUPと提携した。
収益化で苦戦していることに加え、より広い意味でアパレルは、それぞれの体型にフィットしなければならないアイテム、あるいはファッションデザイナーがスタンダードサイズを使っていないアイテムを選んだりしなければならない難しさゆえに、オンライン小売の中でもハードルの高い部門だ。
買収に影響を与えた別の要因はパンデミックだった。パンデミックでは感染リスクのために小売業者は店舗を閉め、消費者は家にとどまってオンラインで買い物することを余儀なくされ、eコマースは数年分前に進んだ。Wells Fargoによると、パンデミック中にAmazonはWalmartを抜いて米国でトップのアパレル販売業者になった。Wells Fargoは、Amazonの2020年のアパレル・靴の売上高が15%増えて410億ドル(約4兆4865億円)に達し、これはWalmartの売上高より20〜25%多かったと推定した。
WalmartはいつからウェブサイトでZeekitを使えるようになるのかは明らかにせず「間もなく」登場する、とだけ述べた。
買収後、WalmartはZeekitの既存事業を継続しないとTechCrunchは理解している。Zeekitは現顧客と移行計画で協業する。
バーチャル試着の普及で返品率を下げ、顧客好みの服を購入する背中を押す1歩と想定できるウォルマートから99株分の四半期配当を受け取りました。
【WMT】ウォルマートからの配当金
ウォルマートより1株あたり0.55ドルの四半期配当金となっているので、0.55×99=54.45ドルが実際の配当金となります。
2021年4月【WMT】配当との比較
前回四半期配当権利落ちより買い増し実施していないため、配当の差異はありません。
【WMT】Walmart Inc.の主要指標(2021年6月5日)
株価 141.85ドル
PER 32.24倍
年間配当 2.20ドル
配当利回り 1.57%
年率EPS 5.45ドル
Payout Ratio 40.15%
増配年 48年連続(Since 1973)
【WMT】ウォルマートの日足チャート(1Year)
【WMT】ウォルマートの週足チャート(5Year)
決して大きな右肩上がりのチャートではないが、安定した店舗売上とEコマースの追加でAmazonに飲み込まれない企業作りをしていける対抗馬の筆頭はウォルマートなのではないだろうか。